一章 襲来の夢

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愛里はエプロンを脱ぎ、手を洗ってから椅子に座り、小さく「いただきます」と言ってから、彼女も朝食に手をつけ始めた。 ………少しの時間が流れて、愛里が兄に質問する為に口を開けた。 「お兄ちゃん、今日夕飯何がいい?」 これも、一週間に一回位の周期で行われる、相良家恒例の夕飯リクエストだった。 海人は全く迷うこと無く、愛里に力強く告げた。 「肉!」 「……え? また?」 愛里は兄の一つ覚えのような返答に純粋に疑問をぶつける。 それに対し…… 「勿論だ。いくら食べても飽きないのが、肉だっ!」 …この調子である。 しかし、ここで簡単には引かない妹。 兄のこの返答はおおよそ想定済みだからだ。 今日で、兄の肉リクエストは六回連続。 それまでの五回は、なんとか色々な肉料理でカバーしたが、流石に六回までいくとレパートリーが尽きてくる。 …第一、愛里はもう肉に飽きている。 「じゃ今日魚ね。帰り買ってきてね。種類は何でもいいから」 「え? 俺の肉…… 「却下」 「……俺のリクエスト無視かよ」 「五回も聞いてあげたんだから、我慢して。第一飽きてるんだから、私は」 兄に折衷案を持ち込んでも、色々な理由をこじつけられて、結局肉になる可能性が高かった為、強引に話を進めた愛里。 海人もこの件には後ろめたい所があるんだろう。 いつもより早く諦め、黙って先ほどと同じように朝食を再開した。 勿論、顔は少し落ち込んでいる感じに変わっていたが。
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