一章 襲来の夢

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「……ところでさぁ、愛里大丈夫か?」 「ん、何が?」 海人が、同じくまた朝食を再開した愛里に尋ねた。 まだ主語が分からないので、取り敢えず愛里は兄に尋ね返した。 「学校」 「あっ! もうこんな時間!? 大変、遅刻するっ!」 愛里は海人に言われて、壁に掛けられている丸時計を見やった。 それは愛里にとって、かなりまずい時間を指していた。 愛里が通っている、湊市立九嶋中学校の最終登校時間は八時二十分。 今、時計が指している時刻は八時八分。 相良家から中学校までは約十五分。 物理的にかなりきつい状況だ。 「大変だな、中学二年生さんは」 「もう、お兄ちゃんが早く降りてこないからでしょ! 朝食の片付けお願いねっ! 私もう行くからっ!」 海人の通う高校と中学校では、最終登校時間に約二十分の差がある為、海人はまだ余裕綽々【よゆうしゃくしゃく】に妹をからかった。 そんな意地悪い兄に片付けを頼み、妹は急いで鞄を取って玄関に向かった。 愛里は靴を履いて玄関を出ようとした時、海人に向かってある事に釘を刺した。 「お兄ちゃん、魚を買ってきてね。さ・か・なっ!」 流石、妹をして十四年。この兄の考えは見抜ききっている。 この時海人は、間違えたとか何とか言って、肉を買ってこようと考えていた。 そこをばっちり突かれ、海人は普通に動揺した。 「わ、分かってるよ。ほら、さっさと行け」 「うん、じゃ行ってくるねー」 そう言い残して走り去っていく愛里。 後に残された海人は、小さく舌打ちをして、悔しそうに呟いた。 「…最近鋭くなってきたな、あいつ」 ……因みに、そうこうしている内に、海人も遅刻ギリギリの時間帯になってしまい、急いで家を出ていったのは余談である。
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