一章 襲来の夢

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  県下でも有数の大きさを誇る都市である湊市。 湊市は大きな市役所を中心に広がっていて、その近くはオフィス街があり、その主要な道路の先には、活気溢れる繁華街。そしてその所々に住宅街が存在する、というのが、基本的なこの都市の造りだった。 そして、その数ある住宅街の中でも一番大きな所に、相良家はある。 またその住宅街には、もう一つ、海人にとって重要な建造物が存在する。 それは、海人が通っている、県立桜ヶ崎高等学校【けんりつおうがさきこうとうがっこう】である。 この高校は住宅街の中心より少し外れた場所にあり、偏差値が中の上辺りという事も相まって、近隣は勿論のこと、遠く離れた場所からも生徒が入る、なかなかの人気校だった。 なお、この高校には一つ、他校と違う一面がある。 その一面が、実は桜ヶ崎高校の人気の秘密だったりする。 海人がこの高校を選んだのも、それが一つの要因だ。 …簡単に言えば、この高校は“甘い”のだ。 別に身だしなみやバイク通学の禁止など、校則関係は至って普通。 しかし、この高校は変な所でずれている。 例えば、本来は入れない屋上が“なんとなく自然に”生徒の出入りが許可されたこと。また、“なんとなく自然に”部活の活動時間が伸びたり等、だんだんねじ曲げられ、それが普通になるという、よく分からない風習のようなものが、この高校にはあった。
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