一章 襲来の夢

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その甘さが魅力でこの高校を選ぶ者も、多くはなくとも、少なからずいることは確かであり、海人もその一人なのだった。 ……そんなわけで入学した海人は今まさに、その桜ヶ崎高校にダッシュで向かっている(尚原則として、この住宅街に住む生徒は、混乱防止のために、徒歩による通学を義務付けている)ところだ。 「く、 やっと見えてきたかっ!」 海人の目線の先には、少し小高い丘になった処に建っている桜ヶ崎高校がある。 「おい、あと五分だぞー。早く教室に向かえー」 校門の処に立っている教頭に軽く会釈をして、そのまま走って教室、1-Dに向かった。 ……そして無事、遅刻せずに教室に入ることが出来たのだった。 「ふぅー、危ねぇ。遅刻するかと思った……」 教室に着くと、海人は真っ直ぐ自分の机に向かい、そこの椅子に座した。 教室には、まだ担任の教諭が来ていないので、いまだガヤガヤと喧騒が響いていた。 ……海人は椅子に座って息を整えると、鞄から教科書類を取り出し、机にしまい始める。 これもいつもの日課のようなもの。 彼はいつも、これが終わってから友人と話を始める。 ……しかしまあ、この時間じゃ、今からは無理だろうが。 ……しかし友人というものは、大体はこちらの習慣など無視をする。 海人の友人であるこの二人もその例に漏れることはなかった。
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