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「さあ、愛情表現かなんかだろ」
説明が面倒なので、冗談を飛ばして誤魔化した海人。
しかし……
「愛……?」
…何故か冗談を真剣に受け取る朋美。
常の彼女なら、冗談だと簡単に通じて、更に拡げていく位の事はざらではない。
なのに今の朋美は、何かを気にしている。
何故か緊迫している感を漂わせながら。
「どうした? 笠川。冗談だぞ?」
「え、うん分かってるよ、そんなの。もうやだなぁ、そんなにボケてないから!」
「…?」
海人の指摘に笑って返す朋美。
それを見て、海人は何かおかしいと感じたが、それよりも、丁度教室に入ってきた、親しい友人の方に気がいき、追及はしなかった。
「おはよう、七瀬。また図書室か?」
「あ、おはよう相良君。うん、また図書委員会の仕事で…」
そう言って、にこっと微笑んだのは、海人と中学校時代から一緒の、七瀬楓(ななせかえで)。
朋美とは対称的な、物静かな感じの少女で、手に文庫本サイズの本を数冊抱えている。
「しかし大変だな。毎朝図書室で司書の仕事とは」
「うん。でも好きだから、そんなに苦じゃないよ」
楓は、中学の時から図書委員会を務めており、先の発言からも分かる通り、本関連の事が趣味である。
このある意味、まともな人間がいないグループの中で、数少ない常識人である為、重宝される人物である。
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