一章 襲来の夢

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そしてその常識人は、早速その常識人と呼ばれる由縁を、しっかりと天誅二人組に発揮した。 「もう、朝から迷惑だよ、二人とも。もうすぐHRだから席についてね」 「申し訳ない、七瀬。直ぐに座ろう」 「ぐっ……! 七瀬さんのおかげで助かっ……いや、助けられたな恭平。今日はこの辺りで許し……… 「また“後で”、な? 吉沼」 ………て下さい! また生意気言いました!」 楓の影響力は、外見と反してかなり高い。 また信頼も多く寄せられ、クラス長まで務める立場なのだから、人徳と器の成せる事他ならない。 この二人を従わせるのだから、かなりのものだという事は、このクラスの者なら簡単に理解出来る。 そんなクラス長、七瀬楓は、二人が席に戻ったことを確認すると、楓も席に向かい、その間に周りにも各々の席につくように伝える。 その伝達に、クラスの誰も反論することなく、ちゃんと席についていく。 高校生活が始まってまだ一ヶ月も経っていない、四月中旬なのに、既にまとまりつつあるクラスになっているのは、クラスの皆のおかげか、楓の手腕か。 とにもかくにも、やっと今日一日が始まった感じが、海人にはしたのだった。 ………皆が席についてまもなく、担任教諭がやってきて、HRが行われ、その後、変わりないいつもの授業が続き、友人との短いひとときを堪能し、そして学校が終わる。 昨日と何一つ変わらない今日。 普遍の日々、普遍の友達、普遍の思い……… 海人はまだ気付いていない。 普遍だからこそ、この生活が、幸せだったことを。 日常が、日常であったからこそ、夢を持つことを許されていたことを。 普遍たるが故の幸せが、もうすぐ霧のように、消えて無くなることを……。
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