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『神々の黄昏』より始まり、[教会]が布教と共に広めた、昏暦。
この聞いた事もないような暦を使う、ある“異世界”で、その動乱は巻き起こっていた。
それは限り無く巨大に、そして尊大に、人を物を、そして存在を蹂躙する。
…その動乱とは、この異世界の人々が、後に『再零戦役』と呼ぶ、大きな闘争である。
…この戦いは、大別に二つに分かれて、約一週間、互いに多くの血を流し合っていた。
…異能力を使役する者達を、確たる軸として。
…そしてここに、その闘争の中核とも呼べる存在である青年が、片手に長剣を携えながら、ゆっくりと、しかし確実に、ある場所に向かって歩いていた。
その場所は、青年が与する勢力とは違う、つまり敵対する“悪夢”の本陣たる、旧文明の古城である。
…その道程までには勿論、本陣たる古城まで到達させまいと、幾人もの刺客が立ち塞がる。
しかし、覚悟と決意を決めた彼の前には、それらは無力に等しい。
彼の歩みは止まらず、その道に残されたものは、ただただ血風と共に崩れゆく屍体のみだった。
…ふと、青年は古城を見上げた。
いや、正確には、古城の空中庭園に立つ、ある一人を見上げていた。
そして、その者もまた、青年を見下ろしながら、彼の到来を“待っていた”。
その者は、この戦いにおける、青年にとって敵側の首魁であり、忌むべき打倒の対象であり、そして…………
青年が愛した、唯一人の女性だった。
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