プロローグ

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「……たとえ」 青年は、此処に来るまでに固めていた覚悟を呼び覚まし、その力を双眸に込めて、少女を見詰める。 そしてその口からは、まるで誓いのように、一言一言を、重みを感じさせて紡いでゆく。 「たとえお前が信じても、俺は、因果律なんて信じない」 …その言葉を訊いて、少女は危うく“表情”を見せそうになるが、努めて抑え、逆に微笑を、青年に見せる。 それが、彼女の決意の証であると、青年は確と悟りながら。 「……忘れない。その言葉……」 …そして戦場に、閃光と爆音、そして一振りの剣光が、煌々と煌めいた……。 昏暦1872年、11月24日。 この日、初めて『執行者』が『争乱者』を討滅した。 そしてこれが、後世まで長く続く、両者の因縁全ての起因であった。 …そして更にこれが、数百年の後に、ある一人の少年と、その周りの者達の運命、もとい因果律を大きく変えていく事になるとは、未だ誰も知り得ない事であった。
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