一章 襲来の夢

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「っ――――はぁ……」 カーテンによって陽光の進入を遮られた暗い部屋。そこで一人の少年が目覚める。 いや、“青年”と呼んだほうがいいのかもしれない。 そんな定義の曖昧な年齢に位置するその青年は、寝ていたベッドから這い出し、カーテンを勢いよく開け放つ。 すると閉ざされていた陽光が一気に暗い部屋を満たし、“朝”を部屋に吹き込んだ。 その朝日によって照らし出されたのは、機能性のある学習机に、四段式の箪笥、先ほどまで青年が寝ていたベッド、楕円形の小さなテーブルなど、典型的な青年の部屋を形作る物だった。 その部屋に明かりを取り込む唯一の窓を青年は開けて、その一身に陽光を浴びた。 そよ風と共に感じる暖かさを受けながら、青年は本日初の言葉を口にした。 「……ここまで明るいと、逆に忌々しいな……」 …意味不明な上に、おおよそ青春を謳歌する者が朝一に吐く台詞ではない。 しかしこの言葉は、今現在の青年の心境を表している事は確かではある。 その心境とは、まあつまり、今から始まる学校に対する、若者特有の漠然とした嫌気と惰性だ。 …簡単に言えば、『ああ、学校行きたくねぇ!』ということ。 …しかし、学業を修めようとしている者として、意味無く休むわけにはいかず、結局は学校への支度をしなければならない。 …だが、躯がいう事をきかない。 頭では分かっているのに。 …そんな青年にとっての極限のせめぎ合いをしていると、下から元気な明るい声が響いてきた。
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