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「ん~、お姫様達が暴れなければ早く帰れると思うよ」 お姫様達というのは最近、転校してきた神界と魔界の文字通りお姫様。なんでもうちの生徒に会う為にわざわざ引越しまでしてきたらしい。 「あー、噂の土見禀くんか」 「蓮にぃも知ってるの!?」 驚きだ。まさか学校の外でも有名だなんて。 「いや、彼よりもその追い掛けてお姫様達の方が知名度はあるからな。うちにも挨拶に来てたし」 うち、というのは魔法管理局という兄の仕事先だ。兄はそこで事務をやってる。 魔法管理局というのは、私達の世界、つまり人間界で勝手な魔法の使用を制限、監視する場所で、人間界にいる全ての神族・魔族の魔法使用を監視している。もちろん監視だけでなく魔法犯罪を犯す者には機動隊が取り締まりも行う。 「で、その時に話を聞いたら土見禀くんに会いに来たって」 「好きな人に会いに世界を越えてくるなんて凄いよね!……校内の破壊活動を控えてくれると嬉しいけど」 「破壊活動?」 「そ。お姫様達って凄い美人でしょ?そのお姫様に囲まれる土見禀くん。それに男子生徒が嫉妬して、土見禀くんを男子生徒全員が襲撃。それを見たお姫様が怒って、魔法をどーん!って感じなの。お蔭様でその度に校舎は破損。おまけに生徒は怪我するし。それでも襲撃を止めないんだから男子ってバカだよねぇ」 「………そうだな」 蓮にぃの顔がなんか、怖い。突然眉間にしわが寄って見た事のない剣幕になった。 「蓮にぃどうしたの?」 はっとした顔になると蓮にぃはさっきとは逆に一瞬でいつもの優しい顔に戻った。 「どうもしないって。ほら、遅刻するぞ。ハンカチにティッシュは持ったか?」 「う、うん。持ってる。本当に大丈夫?」 「大丈夫、大丈夫。ほら、急げ!」 腕時計を見れば時間はすでに8時。蓮にぃの様子が気になったけど、大丈夫と繰り返す蓮にぃを問い詰められない。 「何かあったら私に話してね。それじゃあ、いってきます!」 「分かってる。行ってらっしゃい」 牡丹はアパートの階段を駆け降り、去年買ってもらった自転車に跨がると学校目指して颯爽と漕ぎ始めた。 学校の門が閉まるのは30分後。自転車を使って学校に着くまで30分。 時間はギリギリだ、急げ!
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