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蜜柑が自転車に乗って急ぎ足で学校に向かっていったのを確認してから玄関のドアを閉めた。 「顔に出てたか。現場を離れて久しいからな」 蓮は魔法管理局の事務をしていたが、その前には機動隊に――つまり、魔法を使った犯罪を取り締まっていた部隊に所属していた。その仕事内容は今の事務とは真逆だ。 ―――10年前 後に【開門】と呼ばれる歴史的事件があった。 とある遺跡で発見され、開かれた二つの扉。その先には神族と呼ばれる者が住む神界、魔族と呼ばれる者が住む魔界があった。 開門により、三つの世界は繋がり、人族が住む人間界に大きな変化をもたらした。 開門し、訪れた神族と魔族と人族は比較的平和的に同盟を結び、和平を誓ったと世間では発表された。 しかし、実際は小さな戦いがあった。 遺跡の中は暗く、遺跡の最奥にある門がある場所は特に暗くて、人族はライトを使い門がある部屋を照らしていた。 門をくぐり抜けた神族と魔族はそのライトを攻撃魔法だと勘違いしてしまい魔法で破壊してしまった。 今思えば仕方のない事だ。あの時の神族と魔族は魔法を知っていても、機械の存在は知らなかったのだから。 だが、逆にあの時の人族は機械は知っていたが、魔法を知らなかった。 突然、未知の攻撃によりライトを破壊され、 人族は神族と魔族の最初の訪問者を銃で殺してしまった。 それを発端にした戦い。戦争と呼べる程拮抗したものではなく、その戦略差は圧倒的だった。 人族の攻撃は魔法に防がれ、蹂躙された。 人族は目には目をの流れで魔術士と錬金術士、聖職者といった一般科学の領域外の者達を投入し、戦局を盛り返した。この時、蓮は錬金術士として参戦していた。 ただ、それもつかの間の事だった。なんと、神族と魔族それぞれの王が前に出た事で戦いは終わりを告げた。 人間界は支配されるのかと思われたが、 「これで、終わりにしようや。こっちが不用意に魔法を使ったのも悪かったし」 人間界の先進国代表者達と神王と魔王が遺跡のど真ん中でレジャーシートの上で円を作るようにして険しい顔をぶつけ合う。
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