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「君達が私達の同胞を不用意に殺したのも悪い。この戦いで互いに傷付いた。全てを水に流せとはいわないけど。憎しみあうのはもう止めて」 神王と魔王は背中に手を回し、何かを円の真ん中にどん!とたたき出した。 「酒でも飲んで、いっちょ義兄弟の契りでも結ぼうぜ!なぁ、まー坊!!」 「そうだね、神ちゃん!ちょうど、いいお酒が手に入ったんだ!人間界にも美味しいお酒はあるのかい?」 呆気に取られる代表者達。目の前には神王と魔王が一升瓶より少し大きい瓶に入ったお酒を2本ずつ計4本。しかもいつのまにやらコップまで用意されてる。 この後は宴会状態になり、3世界は酔っ払い達によって和平が結ばれた。 酒が平和を結んだのだ。 反発する人も多くいたが、魔法に恐れをなし口で騒ぐだけに終わっていたし、蓮としては平和になって良かったとも思った。 あの事件が起きるまでは。 開門から2年。とある公園で、一組の夫婦が魔族の若者の魔力の暴走に巻き込まれて帰らぬ人となった。――蜜柑の両親だった。 蜜柑はまだ8歳。小学2年生だった。 蓮は設立されたばかりの魔法管理局の機動隊に所属していたが、牡丹の両親の訃報を聞くと不規則な勤務時間の機動隊をやめて、定時で帰れ週休二日制の事務に移り、男手一つで蜜柑を育ててきた。 蜜柑には交通事故としか知らせていない。これからもっと神族と魔族の交流が深まっていく中で怨みでも持たれたら牡丹はきっと社会に溶け込みづらくなると判断したからだ。 ただ、あれから蓮の中で思うところがあり、神族や魔族には良い考え方が出来ない。 特に魔力の暴走、魔法による破壊といったワードを聞くといつの間にか負の感情が溢れそうになる。 「……仕事に行くか」 蓮は狭苦しい2LDKの家の中をさっとチェックすると、玄関の鍵を閉め安アパートの階段を下り、停めてある駐車してある原付きにたまがる。 蜜柑に余計心配かせさちまったな。しっかりしろ、俺。 今朝は負の感情が表に出ていた。それに蜜柑は直ぐに気付いた。そして、あの可愛い自慢の妹は自分の事のように心配してくれる。 「うじうじしても仕方ないな。うっし、今日も働くか!」 原付きはすっと道路に入ると手慣れた感じでいつもの通勤路を鬱憤を置き去るようにして走り抜ける。
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