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「おはよう、プリムラ」 「プリムラじゃん。おはー」 蜜柑も中学から上がってまだ半年しか経ってないので見た目は十分子供なのだが、その女の子――プリムラは蜜柑から見ても子供、というより幼く見える。 プリムラの容姿は同年代の人間や魔族に比べても幼く見えるのにその顔は誰よりも綺麗だ。 「今日は遅かったね」 「お兄ちゃんが寝坊しちゃって。今日は私が起こしたのに、お兄ちゃんたら二度寝するんだよ」 頬を膨らますプリムラは感情豊かで転入した頃とは大違いだ。 プリムラは転入した当初、無口で無表情な子でクラスメイト達はどう接すればいいのか困っていた。蜜柑とクレオはそれでも仲良くなろうと話し掛け続けたが、言葉は交わせど笑顔を見る事はなかった。 そんなプリムラ変化があらわれ始めたのはある雨の日の翌日だ。最初に気付いたのは牡丹。次にクレオ。 多分、毎日のように話し掛け続けた事でその変化に気付けたのだと思う。 日を追う毎に言葉は柔らかくなり、表情は豊かになった。いつしかプリムラは笑うようになった。 話していく中で『お兄ちゃん』というワードが繰り返されていたので、その変化のきっかけがお兄ちゃんと呼ばれる人なんだろうな、なんとなく分かった。そして、お兄ちゃんとやらにプリムラが恋している事も。 あの大事に『お兄ちゃん』と呼ぶ時のプリムラの顔は恋する女の子の顔で、恋人がいた事のない蜜柑とクレオにはない大人びた雰囲気があった。 幼い容姿、綺麗な顔、大人びた雰囲気。そんなプリムラに蜜柑もクレオも嫉妬を覚えるのと同時に尊敬の念も抱いた事はプリムラには内緒だ。 蜜柑もクレオもプリムラの変化をきっかけに仲良くなる為に話し掛けるのではなく友達だから、一緒にお喋りしたいからプリムラと話すようになってた。 プリムラとの会話の8割は『お兄ちゃん』。あとの2割は女の子なお話だ。 「あ~、私も今日二度寝した。気持ちいいよね、二度寝って」 「分かる分かる。布団から抜け出したくないもんね」 クレオもうんうんと賛同してくれる。 「二度寝はダメだよ!料理も冷めちゃうし、遅刻もしちゃうよ!」 プリムラは腰に手を当てながらぷりぷりと蜜柑とクレオを叱り付ける。 「プリムラたんカワユス~」 「きゃ~っ!?」
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