mixi日記

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「彼は、まだ来てませんか?」 そういうと彼女は辺りをゆっくりと見回した。 「そうみたいですね」 と答えると、 「私、電話してみましょうか?」 と彼女は提案した。 「お願いします」 と私がいう間もなく彼女は携帯を耳に押し当て、彼に電話をかけ始めた。 電話はすぐに繋がったようで、彼女は 「私だけど。今どこにいる?」 と問い掛けていた。 それから二言三言、「うん」とか「そう」などと相づちをうった後に「分かった」といって電話を切った。 「彼、ちょっと急な仕事が入って自宅から出られないみたいなんです。もし良かったら自宅のマンションまで来て欲しいって言ってるんですけど……、どうします?」 「マンションはどこにあるんですか?」 すると彼女が指差したのは、向かい側にある五階建てのマンションだった。 もしかすると最初から彼は、待ち合わせ場所に来るつもりなんてなかったんじゃないだろうか。 ふとそんなことを思った。 でなければ、わざわざ自宅の向かい側にあるカフェを待ち合わせ場所に選ぶなんて考えにくかった。 何で彼女はそのことをなんとも思わないんだろう。 もしかして彼女は彼が待ち合わせ場所に来ないことを予め知っていたんじゃないだろうか? あるいは。 彼女が彼と付き合っていた頃、待ち合わせ場所としてこのカフェをよく利用していて、結局時間になっても彼が来ずに彼女が自宅に上がりこんだ。 なんてことが何度もあったんじゃないかと思った。
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