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クアトロを出て心斎橋パルコの入り口で待っていると、ほどなくして握りしめた携帯電話がブルブルと震えだした。
思わずビクンとなった。
私が携帯電話を開いて耳に当てるとすぐに、「あ!」という大きな声が受話器と外から同時に聴こえた。
その声がする方に振り向くと彼はいた。
まだ名乗ってはいなかったけれど、彼だと分かった。
文章で思い描いていたイメージをつなぎ合わせると、彼になりそうな気がしたから。
思わず笑みがこぼれた。
彼の第一声は挨拶でも自己紹介でもなく、ライブの感想だった。
「演奏もヴォーカルもCDの方がいいですね」
びっくりした。
私も全く同じことを思っていたから。
私はごく自然体で話し続ける彼を見ていて、きっとこの人はこうやって何人もの人に会ってきてるんだろうなと思った。
私たちは「ドルチェモスカート」というイタリアンパスタの店にいた。
彼がよく行くお店なのだという。
そういえば日記にもたびたび「パスタ」というキーワードが登場していたけど、それってもしかしてここの店のことなのかな。
尋ねてみると、彼は嬉しそうに頷いた。
すごい。
日記と現実が繋がった。
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