5人が本棚に入れています
本棚に追加
夜も眠らない都会の町並みを見なくなって、もうどれくらいの月日が流れたのだろうか。
ある事件をきっかけに都会から逃げてきた臆病者の俺は、今日もまた、いつもの場所へ足を運んでいた。
この町にきてから1ヶ月。都会との違いに毎日驚かされてばかりいた俺だったが、今ではその生活にもすっかり慣れ、それが当たり前のように感じるまでになっていた。
(そうだ、もう1ヶ月になるのか)
1ヶ月前。目的もないまま、いくつもの町を彷徨っていた俺は、その日、ある女の子と出会い、何故かその子の家族と一緒に暮らすようになった。
食べ物もろくに摂らず、ただ1日生きのびる方法を探すだけの生活は一変し、今では毎日のように気ままな飼い猫生活を送っている。
朝には女の子を見送り、昼には縁側で陽なたぼっこや散歩に出かけたり。
さらには、夕方には女の子の帰りを待ちながら、夕食づくりの光景を眺めている。
前の生活からは想像も出来なかったことだらけだ。
今までこんな経験をしてこなかったせいか、このまったりと時が流れていく日常にだけは、未だになれることが出来ないでいた。
最初のコメントを投稿しよう!