記念日健忘症

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…ねえ、アナタ!。 仕事から帰ると、彼女が 迎えてくれる。 …有り難いことだ!。 そこまでは、彼も覚えている。 だが、しかし 翌日の朝には エッチのこと以外は、 何も覚えてはいない。 考えてるのは、会社の事だけ だからだった…。 夢野急二朗は 仕事バリバリ人間だ。 彼は、某、大手飲食業界 チェーン店の店長だった。 長とは、言っても名ばかりで 責任だけが押し付けられ、 給料は、安かった。 それでも、頑張っている。 彼には将来、独立開業の夢が あるからだった。 と、言う訳で…、急二朗は、 家庭でも、昼間の事しか、 頭にはない。 そんな、彼では有ったが 家では、奥さんが一手に 仕切って居るはずだった。 急二郎は思う… ー女房だって…、 理解して、くれてる筈だ!、と なぜなら、仕事をして、給料を、 得て、俺が稼いでいるのだから…。 子供は無いが…、 彼女が可愛く、まだ少女のよう だった。 また、 夜がやって来た…。 …ねえ、アナタ、今日は何の日? と…、待ってる女房が言う。 が、彼にはそんな事分かる 筈がない。 …いいから、いいから。 彼は、ベッドに連れ込み エッチする。 またある日の夜… …ねえ、アナタ、今日は 何の記念日か知ってる? どうやら、彼女は、事あるごとに 記念日が、気になるらしかった。 …いいから、そんな事、 どうだって、いいだろう。 彼は、彼女を抱き上げ、ベッドへ 押し倒す。そして、抱き付く。 彼女が、何かを言っている…。 …まあ、細かい事は、 気にしないで…と、急二朗は 一方的に、馬乗りになる。 ー何と、気持ちが良い。 これだから、結婚は、 やめられない…。と、思う。 そして、彼は、幸せを 噛みしめた。 次の瞬間、ガバッと彼女が 振り払った。 …何するんだよう!? …アンタこそ何よ! あれから… …一年目 健忘症は治ったようだ。 今日と言う日。 一人寂しく、 忘れられない。 二年目の今日も…。 また、思い出す。 そして三年目… 夢野急二朗は、わびしく一人思う。 ー俺は、今まで、先の事しか 頭になかった。だが、この日 だけは、記憶に、刻まれて 思い出す…。 あれほど、女房に言われても、 記念日の事には、関心の無かった 俺だけど… 生涯、忘れられない、 日となった…。 三年目の冬の…、 離婚記念日の、 夜の、事だった。 終り
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