人助けならぬ“梅”助け

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  「ねぇ……知ってる?」 それは、学校の帰り道。 部活が終わった後も、人気のまばらな教室に居残り 私は、親友である菜緒(ナオ)の恋バナやら、夢の話しに付き合わされて……帰路に着くのがすっかり遅くなってしまっていた そんな夕刻時――――――― 8月も半ばであると云うのに むしむしと纏わりつく熱気と モワッとむせかえる様な湿気感 それにより、首筋を流れる汗は否応無しにベトつく肌とYシャツを密着させる そのせいで嫌悪感全開な私は、 夕焼けにより、茜色の光が射す帰路をダラダラとだらしなく歩みながら 冒頭に登場した親友の菜緒と一緒に、家への道を歩いていた 徐々に伸びゆく影法師 力任せに鳴き声をあげるひぐらし 一面、茜色に色づく中でポツリともらした彼女の声が辛うじて私の鼓膜を揺らす―――― その話しに、さほど興味が湧いた訳ではない けれど一度、拗ねてしまった菜緒の機嫌取りをするのはそれこそ面倒だと…… 私はパッチリと整った菜緒の顔を覗き込み 神様が故意に、その各パーツをより一層引き立てる為にと与えたであろう……淡い栗色の瞳をジッと見つめ、無言で先を促した そして、そんな私の態度に幾分 気を良くした菜緒は得意気に、 それは軽やかに舌先を転がし始める 「あのね?梅見公園なんだけど 最近……出るらしいよ?」 えっ?何が……? 話しを小出しにして、気のない私の興味を引き出そうとする彼女の作戦に、まんまとのった振りをして……機械的に私は聞き返した ,
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