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そんな私に、普段は雪のような真っ白な肌を、真っ青に変えて
「“幽霊”に決まってるじゃないっ―――!!」
そう、ぷっくらと震える唇で肩を抱きながらに菜緒は息巻いた
「ほぉ、そりゃ大変だねぇ~」
無論、それをサラリと聞き流し適当に相づちを打つ私に
彼女はほんのりバラ色の柔らかそうな頬を膨らませて、両の手のひらをギュッと握り締めている
「色葉(イロハ)っ……!!私が嘘ついていると思ってるでしょ!!」
もうっ!!と、そっぽを向きながら
「本当なのよ?クラスの子が何人も見たって言ってるんだからぁ~!!」
そう叫ぶ度に、菜緒の柔らかそうな瞳と同系色の髪がふんわり揺れる
先程から、私達の間で持ちきりの通称『梅見公園』
正式名称は定かではないが、
春になると綺麗な花を咲かせる
見事な梅の木がシンボルである事からそう近所では呼ばれている
私の子供の時からあるその公園は、昔ながらのすべり台、
鉄棒、ブランコ……
そんなものしかない“こじんまり”とした……
だけど私には馴染みの深い場所だった
菜緒の話しに私が疑いの心を持ってしまうのも当然で……
もう何年もあの公園に通っているけれど、今までにそんな
“モノ”を一度も見たことがないのだ
と、言うのも……
私の家は、その噂の公園の
すぐ近くに建っていて……
大袈裟に言えば、いわば、
梅見公園は我が家の庭の様なもの
現に、高校に上がった今でも
ほぼ毎日2回、断然近道となる
あの公園内を通過して登下校している
そんな私が、その“幽霊”とやらを見ないのだから……
ただたんに、超暇人な誰かさんが面白半分に付いた嘘にしか思えない
ただの噂に過ぎないだろう
私はやれやれと肩をすぼめて
濃い溜め息を盛大に吐き出した
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