マフィアからの手紙

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手紙が届いている。 さして物の無い俺の部屋を訪れた妹、立花凜香はそれだけ言って、学校に行ってしまった。 中学卒業間近の3月某日。 俺の妹、立花凜香は、兄の立場を抜きにしても、多分、おそらく、可愛い。 俺の美的感覚が普通ならば、100人の男性(年齢不問)にアンケートを取ってみても、少なくとも90人は可愛いと答える位の容姿はしているんじゃ無いだろうか、と思う。 それ位、可愛い。 そんな妹、凜香だが、現在長い長い兄妹喧嘩中だ。 両親を事故で亡くし、祖父母も既に他界していた俺達は、両親の保険金と、猫の額50匹分、雀の涙1L分位の遺産を生活費に、比較的広い家で凜香ともう1人の妹と3人暮らし中であり、俺的にはかなり気まずい状態なのである。 喧嘩の理由は至極単純、な訳でもない。 かなり深い、ドロドロとした理由ある。 訳でもないが、長くなるので割愛。 まぁ100%俺が悪いってのは先に言っておく。 「お兄ちゃん、学校行ってくるね」 俺が手紙を開けようとしたその時もう1人の妹、凜香とは二卵生双生児である立花爛香が控えめにドアを開けた。 「おう、気を付けろよ」 「うん」 最後にまた行って来ますと言ってドアを閉める爛香。 爛香と凜香は双子なのに全く似ていない。容姿だけでは無い。 性格もだ。 片や腰まで伸びたストレートなヘアスタイルを持つ爛香。 片や肩までのウェーブがかった髪型の凜香。 ややたれ目の温厚そうな爛香。 性格に違わないつり目気味の凜香。 俺への態度も違う。 ある事件から俺を避ける様になった凜香。 その事件を経て尚、俺と接してくれる爛香。 全てに置いて正反対の2人だが、それが磁石の+と-の様に惹かれ合うのか、それとも双子だからなのか、2人は兄の俺でも入り込めない絆の様な物がある。 それもまた、気まずさの原因である。
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