931人が本棚に入れています
本棚に追加
手紙が届いている。
さして物の無い俺の部屋を訪れた妹、立花凜香はそれだけ言って、学校に行ってしまった。
中学卒業間近の3月某日。
俺の妹、立花凜香は、兄の立場を抜きにしても、多分、おそらく、可愛い。
俺の美的感覚が普通ならば、100人の男性(年齢不問)にアンケートを取ってみても、少なくとも90人は可愛いと答える位の容姿はしているんじゃ無いだろうか、と思う。
それ位、可愛い。
そんな妹、凜香だが、現在長い長い兄妹喧嘩中だ。
両親を事故で亡くし、祖父母も既に他界していた俺達は、両親の保険金と、猫の額50匹分、雀の涙1L分位の遺産を生活費に、比較的広い家で凜香ともう1人の妹と3人暮らし中であり、俺的にはかなり気まずい状態なのである。
喧嘩の理由は至極単純、な訳でもない。
かなり深い、ドロドロとした理由ある。
訳でもないが、長くなるので割愛。
まぁ100%俺が悪いってのは先に言っておく。
「お兄ちゃん、学校行ってくるね」
俺が手紙を開けようとしたその時もう1人の妹、凜香とは二卵生双生児である立花爛香が控えめにドアを開けた。
「おう、気を付けろよ」
「うん」
最後にまた行って来ますと言ってドアを閉める爛香。
爛香と凜香は双子なのに全く似ていない。容姿だけでは無い。
性格もだ。
片や腰まで伸びたストレートなヘアスタイルを持つ爛香。
片や肩までのウェーブがかった髪型の凜香。
ややたれ目の温厚そうな爛香。
性格に違わないつり目気味の凜香。
俺への態度も違う。
ある事件から俺を避ける様になった凜香。
その事件を経て尚、俺と接してくれる爛香。
全てに置いて正反対の2人だが、それが磁石の+と-の様に惹かれ合うのか、それとも双子だからなのか、2人は兄の俺でも入り込めない絆の様な物がある。
それもまた、気まずさの原因である。
最初のコメントを投稿しよう!