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俺は爛香が家を出たのを確認し、リビングへ向かった。
取り敢えず爛香の作った朝食を食べる。
目玉焼きにソーセージ、食パン。
誰にでも作れるが爛香が作るとなかなかに美味い。
「さて…、手紙か…」
食べ終わった食器を洗いながら思う。
手紙なんて何年振りだろう。
小学生の時の同級生の年賀状が最後だ。
手を拭き、裏を見る。
立花新人様へ。
家の住所と共に丁寧な字で、そう書いてあった。
逆に言うと、それだけだ。
封筒の中身はなんの装飾も無い、シンプルな便箋だった。
――――――――――――
立花新人様へ。
初めまして。
突然のお手紙申し訳御座いません。
とある事情から、この様な失礼な形になってしまいお詫び申し上げます。
さて、我々が貴方へ手紙を送った理由。
率直に言います。
我々の組織に入って頂きたいのです。我々、アメリカ系マフィア、ケネディ・ファミリーに。
この手紙は読んだら、燃やすなり、千切るなりとにかく直ぐに処分して下さい。
そして、別紙に書かれてある住所に即刻向かって頂きたい。
ケネディ・ファミリー日本東京地区支部広報宣伝部、アニー・ウィリアムズ。
――――――――――――
……………。
「誰が行くかボケェ!」
大体マフィアなのに広報宣伝部って!宣伝すんなよ!
しかも入れって!最近の詐欺は凄いな!
と、声と心でツッコミを入れ、封筒ごと手紙を床に叩きつけた。
「ん?」
すると叩きつけた封筒から数枚の紙が。
別紙の住所と言う奴か?
それを拾い上げ、目を通す。
一枚目には、友達と楽しそうに話している爛香。
二枚目には、所属しているバスク部で一心不乱にプレイする凜香。
そして三枚目には住所と簡単な地図。
サーッと、血の気が引くのが分かった。
これは体の良い(悪い?)人質だ。
言う通りにしないと、妹達がどうなっても知らないぞ、と。
俺はすぐさま、準備を始めた。
取り敢えず寝間着を着替え、役に立つか分からないが、腹には雑誌を巻き、ポケットにナイフを忍ばせる。
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