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と、言う訳で。
「じゃ、行って来る」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「おう」
俺は原付に跨り、エンジンを掛けた。
そしてアクセルを半分程開け、走り出す。
行き先は勿論、ケネディ・ファミリー日本支部。
今日から俺はマフィアだ。
☆ ☆ ☆ ☆
ピンポーン。
と、普通オブ普通の、日本全国津々浦々、毎日毎日鳴り響くありふれた音が響いた。
「ハイ?」
ルーシーさんの声がインターホンから聞こえる。
「どうも。立花新人です」
「あ、入って下サイ」
何か発音が変だな。
まぁ外国人だし仕方無いか。
これまた普通オブ普通のドアの前に立ち、俺は普通オブ普通のノブを回した。
「どうも…」
まだ2回目の訪問なので、若干緊張する。
今までの事が本当に全部ウソだったらどうしよう。
不安たっぷりに室内に入った俺を迎えたのは、先ほどのインターホンと同じ、少し発音のおかしいルーシーさんの声だった。
「いらっシャイ」
「へ?」
ルーシーさん?
いや、違う?似てるけど…、全体的に少し小さい…、のか?
「えっと…?」
「アナタが立花新人クン?わぁ、お姉ちゃんの話してた通リダ」
お姉ちゃん?
「じゃあ…、君が、ルーシーさんの?」
「YES。妹デスヨ。クレア・キャメロット。始めマシタ」
そう言ってルーシーさんの妹、クレア…、さんか。クレアさんはルーシーさんそっくりの太陽の様な可愛らしい笑顔と共に手を差し出した。
握手か。
ルーシーさんのお陰で外国人の対応にも慣れた。
気がする。
なので、最初と違い、今回は迷う事なく握手を返せた。
のだが。
「それを言うなら、始めまして、です」
と、言葉の途中で、視界が反転した。
「よ?」
そして次の瞬間には、俺は床に仰向けに倒れていた。
背中への凄まじい衝撃とセットで。
「…うっ…!」
息が止まった。
マジで。
背骨もミシミシと嫌な音を立てる。
「アハハ。シュガーより甘いデスヨ。新人クン」
ルーシーさんに似た言い回しで、クレアさんは楽しそうに笑った。
「いってぇ…」
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