931人が本棚に入れています
本棚に追加
扉をくぐる。
くぐった。
何度も言うが瓦屋根の木造モルタル二階建て。
ありふれた日本家屋の扉を、だ。
「うっそぉ…」
俺の予想した内装の180°逆。
何部屋もあるだろう家の壁をぶち抜き無理矢理1部屋に変えた家。
柱も最低限の物しか無い。
家具もおよそ日本では見たことのない様な、お洒落で高級感溢れる品物ばかりだ。
と、マフィアのアジトへ単身突入した事をすっかり忘れた俺が、キョロちゃんよろしく(響きだけだ)周りをキョロキョロと見回していると、俺を先導していた女性が甘い匂いのする豊かな栗色の髪を揺らし、こちらに振り向いた。
「貴方は立花新人君ね。私の名前はルーシー・キャメロット。よろしくね」
そう言って手を前にだす。
「?」
文字通り頭にクエスチョンマークだ。
「もぉ、握手よ、握手。自己紹介」
「あぁ…」
俺は手を差し出した。
瞬間。
一瞬で視界からルーシーさんが消えた。
そのまま頭がそれを理解する前に腕を引かれ、体が中に浮くのが分かった。
一本背負いという奴だ。
いや、まぁ柔道なんてした事ないから分からないが、多分一本背負いだ。
背中から見事に床に落とされ、一瞬息が止まる。
「どべぇ!」
突然投げられたら人間どんな声が出るか分からない、そう思った瞬間だった。
「甘いわね。練乳くらい甘いわよ、新人君。いついかなる時も油断するな。それがマフィアよ」
ルーシーさんはそう言った後、痛がる俺の手を取り、優しく立ち上がらせてくれた。
「なんてね。大丈夫?これ、通過儀礼なの」
「大丈夫じゃないっス…」
最初のコメントを投稿しよう!