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「じ、じゃあ、お願いします…」
「おう!早いとこ乗ってくれ!結構時間が押してるんだ!」
俺は荷物をトランクに仕舞った後、クレアさんと共に後部座席に乗り込んだ。
「じゃ、行くか」
☆ ☆ ☆ ☆
5時間。
300分。
18000秒。
俺達は車に揺られた。
日はとっくの昔に落ち、真っ暗闇の山道を、チェリオさんの運転する車は走っていた。
「チェリオさん…、まだですか…」
長時間座りっぱなしで、腰は痛い。
それに、2時間前から別の意味の緊張で、心臓がバクバクと激しく鼓動している。
何でかってアレだよ。
俺の右側に座るクレアさんが、ピッタリと俺に体を寄せ、寝ているんだよ。
肩に頭を載せて、右手はあろうことか太股で、左手にいたっては俺の右腕を抱き締めてるんだよ。
もう、柔らかい感触とか甘い匂いで、頭がイカレそうだ。
それから寝相なのか知らないが、たまに頭を上げるから、俺の首筋辺りに暖かい息が吹き掛かって…。
チェリオさんが居なかったらマズいぜ。
この状況。
「まだまだだな」
「マジッスか…」
俺のげんなりとした表情をバックミラー越しに見たチェリオさんはカラカラと快活に笑う。
「いーじゃないか。その状況」
よかないよ。
緊張で死ぬよ?マジで。
「ま、安心しろ。あと30分位で着くから」
30分。
って、1800秒もあるじゃん。
死ぬって…。
「ウゥ~ン…」
「……!」
ヤバい。
折角慣れてきたのに。
いや、慣れるのに2時間も掛かったってのもどうかと思うが。
状況が変わった。
クレアさんが横になった。
横に。
具体的且つ簡単に言うと、膝枕だ。
クレアさんの頭が、俺の膝に載った。
肩から膝。
肩to膝。
いや、太股か?
「おいおい。羨ましいなぁ」
他人事だからって、そんな適当に笑わなくても…。
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