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もう零落したかの家は、かつかつの生活を強いられており、桜に仕える女房とて、もう何人も残っていない。それへ男を世話しようという奇特な親戚も遠のき、ますます桜の生活は苦しかった。
それでも、桜の美しさだけは、噂にのぼる。零落した館に住まうもの、というかの物語にも似た憧れが、男たちの胸ばかりかきたてていた。
それを聞き止めたのが、姫がいなかった左大臣家であった。右大臣家は十三歳になる皇子に既に娘を入内させており、その意味では左大臣家は遅れを取っていた。
いくら古くても、宮の血筋ならば申し分無い。
桜は、いずれ女御になることを約束されて、左大臣家へ養女として入ったのであった。
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