終わりと始まりと

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   ――これは、どういうことだ?  目を覚ました俺は、自分が人の行き交う横断歩道に突っ立っていることに気が付いた。スーツに身を包んだサラリーマンや、制服に着られた学生達が、俺の横を通り過ぎていく。俺はいつから、路上で立って寝るという特技を習得したのか。  そこでふと、違和感を感じた。人々が何故か、俺の周りを避けるように歩いているのだ。俺の足元を見て、すっと目を伏せる者もいる。  俺は足元を見てみた。  そこに有ったのは、小さな白い花束と包装紙にくるまれたお弁当。こんな物が道端に置いてあるのは確かに変だが、迂回するような理由になるだろうか。  今度は自分の身なりを確かめる。記憶にはないが、気味の悪い格好でもしているのではないかと思ったのだ。  俺は黒いスーツを着ていた。厚手で、肌触りがよい。衣服の価値がわかるような人間ではないが、かなりの高級品だと思う。高そうなネクタイまで締めていた。こんな服を持っていた記憶はないけれど、避けられる理由は服装ではないらしい。  ――では、何故?  解決のきっかけとなったのは、声。 「おやまぁ、こんなところで可哀相に」  深く考え込んでいた俺の耳に飛び込んできた、しわがれた声だった。
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