【第一章】夢に向かうまで。

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高校に入って、やや本格的に情熱を持って絵を描いている奴らと数人出会ったけれども、悲しいかな3年の間にその情熱も弱まり、卒業のころには全然残っていなかった。卒業を前に「漫画家になるんやろ?そろそろ本格的に動こうぜ!」と語ったが、「あー・・・漫画家な・・・なれたらなるよ」という友人の気の無い返事に僕は憤慨した。「なれたらなるよって・・・そんなんでなれる訳あるかい!」初めて絵に情熱を持っていた仲間だっただけに失望感が強かった。 それから、すぐに会社員になった僕は、ライバルと呼べる友人も居らず、供に夢を語り合う仲間も居ない状態で、「イラストレーターを目指している」という言葉もどこか虚しく響くようになり、自然、口を閉ざすようになっていった。 家族も僕が絵を描き続けていたことなど知らなかったと思う。 描いた絵はすぐ引き出しにしまった。 あまり内輪の恥を晒すのもどうかと思うが、中・高校のころは家庭が非常に荒れていた時代であった。家庭が、というよりウチの場合は父親が、である。酒を飲んではモノを壊す、飲酒運転で交通事故を何度も何度も何度も起こす、八つ当たりにペットを殺す、母を殴る、ガラスを割る。家具を壊す。まあ、ロクでもなかった。 そんな状態だったので早く母親を連れて家を出たかった。そのために大学など行って悠長に学生などしてる場合ではなかった。なによりウチは非常に貧乏であった。当時父親が作った借金は、今なお僕が支払っているほどだ。 高校の先生が「そうかぁ・・・お前就職すんのか・・・もったいないなぁ」などと言って大学や専門学校などのパンフレットを引き出しに閉まっていたのを思い出す。選択肢は無かった。これでいいのだと思っていた。(つづく)
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