プロローグ

3/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
遺影の顔が歪んだ。 否、私の視界が歪んだんだ。 あぁ、やっと泣けた。 目を閉じると、浮かぶのはおばあちゃんの顔。聞こえるのはおばあちゃんの声。 「あの人は言ったの。 『泣かないで。ずっと笑っていてほしい』ってね。ふふふ。」 頭の中のおばあちゃんは、 そう言って微笑んだ。 まもなく出棺のようだ。 お棺がみんなの真ん中に運び出されてきた。 みんなが次々花をいれていく。 顔が埋もれてしまう程に。 やっと私に花の入ったお盆が回ってきた。 色とりどりの花はもうすでにとられて、残っているのは菊のみだった。 私はそれを、おばあちゃんのお腹の辺りにおいた。 といっても、既におばあちゃんの上は花で溢れかえっていて、あくまで辺りなのだが。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!