第一章 アルトナーグ帝国

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ライフ達がリートで村を飛び立ったと同時刻。 アルトナーグの中心部である王城では、一人の青年が笑っていた。 「やっと帰ってくるか」 朝焼けに染まった空が、部屋の中をオレンジ色に照らす中、その青年はつぶやく。 久しぶりの彼らにどのようなことをしてやろうかと心を馳せると、どうしても顔がにやけるのが止まらない。 まだ時間がかかるとは知りながら、内心では今か今かと待っていた。 「なかなか帰ってこられないのは殿下の所為ではなかったかと……」 青年が朝焼けに目を移すと、そこへ割り込む声があった。 「エリルガか……宰相の仕事には慣れたのか?」 突然部屋に入ってきた宰相、エリルガ・オールトファルムにも動じず青年は自然に何もなかったかのように会話を成立させる。 彼は歴代の宰相の中で一番若く、24歳でその位置を獲得したある意味の天才である。 性格は穏和で臣下からの信頼も厚い。 「失礼ですね。私がいつからこの仕事をしているか殿下はわかっておいででしょう?」 「それもそうだな。あいつらが行ってすぐだから半年前ぐらいか……」 「もうそんなになるのですね」 青年は頷く。 エリルガと同じように、青年も半年ほど彼らと顔を合わせていなかった。 端末の電波も、離れすぎていると届かない。 何人もの伝達官のおかげで、声だけは繋げることができたが、それは彼らがどこにいるか知っている場合のみだ。 「待つとは長いものだな」 教訓のような台詞は、そのまま彼の心情を表していた。
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