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ライフ達はリートの上に乗り、空を飛んでいた。
明るくなった空には透けるような雲が浮かぶ。飾りのように浮かぶ雲は形を変えながら遠く遥か彼方へと流れて行き、ついには見えなくなる。
2人の間には長い間会話がなかった。ひとえに風圧が強いというのもあるが、それだけとも言えない。
ライフは最初からあまりしゃべるタイプではなく、アナンもリートの進行方向を指示しているため、しゃべることが難しいのだ。
しかし、珍しいことにライフがその沈黙を破る。
「最後の任務、あれはあっちの仕事じゃないよな」
嘆息にも聞こえてしまうほど小さなライフの声にアナンは首肯した。
「あれは国兵にもこなせるものだからな。わざわざ俺達があっちの任務で出向くほどの物じゃないさ」
ライフも首を縦に振ることで肯定。
だが、その顔は、先程よりも引き攣っているように見えた、いや、完全に引き攣っていた。
「差し詰めあれは皇太子殿下の気まぐれってところかな」
やれやれと首を振るアナンに、
「あいつはそんなやつだ」
ライフは感情を表に出さずに言う。
半ば諦めたようにつぶやかれた言葉に、アナンは声を上げてしばし笑うと、諦めろとばかりに笑みを曖昧に崩した。
「皇太子殿下をあいつ呼ばわりか。お前らしいな」
苦笑するアナンが呆れ顔でつぶやくのを聞き流しながら、ライフは瞬きする。
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