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「ライフ! そっちいった」
長い外套(ガイトウ)を纏(マト)った2人組が、木々の鬱蒼(ウッソウ)と生い茂る森の中を1匹の巨大な獣を追って走っている。
「わかっている」
ライフと呼ばれた片方がその言葉に鋭く答え、さらに走るスピードを速めた。
片手には剣が握られ、日の差さない森の中で、淡く発光しているようにも見ることができる。
少年達の動きにあわせて、絨毯(ジュウタン)のように敷き詰められた枯れ草が、ガサガサと音を立て、音に驚いて鳴き声を交わし続ける動物の声もまた、大きく響いた。
少年は追撃者から逃れようと走る獣に易々と追いつき、その剣を大きく振り下ろす。
ザシュ────…
と、なにかが切り裂かれる音とともに、真っ赤な鮮血が派手に飛び散り、当然、少年にもその真っ赤な雨は降り注ぐ。
「くそっ……浅いか」
表面上をなぞったような手応えしか感じられなかったライフは小さく舌打ちした。
「アナン!」
間髪入れずにライフが叫ぶと、同時に獣の後方で何かが光り、暗い森の中を照らす。
「第1コア起動」
アナンと呼ばれた少年の声によって光はより強くなった。
獣にとっては、その全てが深淵からの悪魔の声に聞こえるだろう。ライフは次に起こることを予測して剣を構え直す。
「……《巨壁-ディアグル-》」
アナンの静かな、つぶやきとも取れる言葉が発された瞬間、獣の前方には巨大な壁が顕現(ケンゲン)、作り出される。
獣は、突然現れた壁に止まり切れず、激突した。
それでも壁はびくともしない。
獣はすぐに態勢を立て直そうとするがそれさえも天は許さなかった。
ズブリと、ライフの持つ剣は大剣へと変化し、獣の胴を切り離した。
それがわかったとき、もう獣に意識はない。
森に横たわったのは静寂(セイジャク)。
夜の森は限りなく静かだった。
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