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「なにがっ……!!」
即座にアナンは後方を振り向き、その殺気の出所を探ろうと辺りを見渡す。
端末を閉じ、ズボンのフタのついたポケットへと押し込むと、アナンはベルト位置にあるコアへと手を伸ばし、その在りかを確かめた。
ライフも手を滑らせると、もとの位置へとコアを戻す。
グギャォォォォ────…
猛々(タケダケ)しい獣の吠え声が森の中に轟(トドロ)く。暗い森の中は月明かりさえ差し込まず、フェアルによって強化された視界だけが頼りだ。
ライフは消していた剣を、空中より取り出し、一歩足を引くと、正眼に構える。
この、剣を空中から取り出すという行為も、フェアルを応用したものだ。
「血の匂いに寄せられたか」
仕事が増えたと言わんばかりのアナンだが、その間も気を抜くことはない。
しかし逆にライフはその殺気に少しの違和感を感じて、アナンに質問をぶつけた。
「……今回の任務、獲物の体長を聞いているか?」
いきなりの質問だが、任務の契約用紙を思いだし、アナンは少しだけ考えて答えを返す。
「……10メートル程の巨大な獣で依頼主の村の者達は大きな被害を受けたそうだ」
アナンの言葉にライフは少し考えるそぶりで、目を伏せる。
「でもそれがどうかしたか?」
「……考えてもみろ。もしそうだとしたらこいつは小さ過ぎないか? こいつの体長は、せいぜい見積もって5メートル程。見間違えたにしては不自然だ」
アナンはその言葉に、思索するようなそぶりを見せ、一拍を待たずして小さく頷いた。
「……確かに。明らかにおかしいな。そこまでの、食い違いは考えにくい」
そうこうしているうちにも、殺気の発生源はその間にも2人に近付いて来ている。
二人の緊張に合わせるように、コアが光を帯びた。
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