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心臓の鼓動一回分に相当する時間の後、差し詰め獲物の品定めでもしていたのだろう、ガサリ……と2人の程近くにある茂みが揺れた。
「おいおいライフ、ビンゴみたいだ」
アナンの顔が引き攣り、不自然な笑いを浮かべる。
無理もない。
そこには、2階建ての一軒家程ある巨大な獣がいたのだ。
体長10メートル。四本足の獣は、爬虫類のような皮膚を持ち、開けられた口には尖った歯が垣間見える。
血走った目には、血に誘われた狂気に加え、鋭く冷たい光が宿っていた。
ライフは、渇いてざらついた唇を動かす。
「……死体回収班は後どれぐらいでこちらに到着する?」
「さっき端末で連絡入れといたからあと10分ってところだ」
そう言いながらも2人は油断無く個々の武器を構えるのを忘れない。
暗視の効いた視界にはっきりと獣の姿を映したまま、フッ……とライフが表情を緩めた。
「十分だ……1分で終わる」
彼らは同時に地面を蹴り、空中へと跳び上がった。
獣の狂気をはらんだ瞳が揺らめき、硬質な皮膚で覆(オオ)われた尾が2人に迫る。
高速の尾は、半端(ハンパ)な装備だと簡単に壊してしまうだろう。人などなおさらだ。
しかし、対峙(タイジ)する彼らには、余裕の笑みがあった。
「刈るのは任せた。へますんなよ、ライフ!」
「フンッ。
そんなこと誰がするか」
アナンの声にライフは気負い無く返し、獣を倒すための技を発動させる。
その際、無機質な闇の空間に、コアをフェアルが通過する光が輝いた。
「術凍結解除。
《飛刃-グリアライド-》」
剣にフェアルを乗せることで、剣圧を遠くまで飛ばす《飛刃-グリアライド-》
あらかじめ剣に込められていたそれが、使い手の意志によって真っすぐに駆け抜けた。
瞬間。
飛び散った血飛沫(チシブキ)に辺りが真っ赤に染まる。
大きな重量感のある音ともに、あれだけ大きな獣は成すことを成さぬまま剣風で切り裂かれ、最初の獲物の横に転がることとなった。
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