59人が本棚に入れています
本棚に追加
始まったのは一瞬で、終わったのもほぼ一瞬と言っていい。
その行為が、戦闘と呼べるのかさえわからない。
あれから10分経って到着した死体回収班は、時間に遅れることなく迅速に、黙々と自分達の仕事をこなしている。
手際のよさは、エキスパートだけあって、驚くほど無駄がない。
ライフはそれを目の端に映しながら、アナンの方へと歩み寄った。
この任務、獣討伐の依頼は小さな村からのものだ。
ただでさえ貧しい村はライフらの倒した獣によって大きな被害を被っていたらしい。
農業を営んでいる彼らは、獣との戦闘など慣れているはずがない。
ましてや、血に狂った獣。補食目的以外に快楽を得るために行動する彼らへ、憎悪を抱こうとも、倒すことなど到底できないだろう。
「ありがとうございます」
村長が獣を倒したライフとアナンに深々と頭を下げた。
「任務だ」
ライフが聞こえるか聞こえないかでボソリと呟くと、アナンがライフの頭を後ろから叩く。
「すいません。こんな奴なんです」
「いいですよ。あなたがたはこの村の恩人ですから」
それを見て村長はニコニコと笑う。
叩かれた者の思いを無視して、微笑ましい光景のようにでも見ているのだろうか。
ライフは叩かれたところを押さえる。
アナンの所業は何気に痛いのだ。笑い事ではない。
「クソ……」
ライフの怒りは呪いの言葉を吐き出すに留まった。
ライフは村長の話に興味を失い、周りを見渡すと、目の端にこちらへと向かって来る1匹の動物が映る。
最初のコメントを投稿しよう!