第一章 アルトナーグ帝国

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やって来た動物はライフの足元へ来ると体重がないかのようにひらりと肩に飛び乗った。 不服そうな顔をするそれの鼻先をくすぐるように撫でながら、ライフはその動物に向かって話し掛ける。 「ココウ。村の守護、苦労をかけた」 『退屈過ぎる。俺も一緒に行きたかった』 小動物が顔をしかめながらしゃべると、ライフは苦笑した。動物のくせに、よくころころと表情を変えるものだ。 6年前の任務中に突然ライフの前に現れ、それからずっと行動を共にしているため、共にいる時間は、今の任務仲間であるアナンよりも長いということになる。 猫ほどの大きさだが、うさぎのように耳が長く、真っ白な毛並みをしている。首の周りの毛は他のところよりも分厚く、さらに柔らかい。 しっぽの毛はそれ以上にさらさらとして、ココウがその尾を振る度に、流れるように動く。 一番特徴的なのがその額を飾る大きな宝玉だ。 光の角度によって沢山の美しい色合いを、見るものに焼き付けた。 「そういや、リートはどうした?」 ライフは自分の肩の上で毛繕(ケヅクロ)いし始めたココウに聞いた。 リートは、この村までライフとアナンを運んだアナンの巨鳥だ。 純粋なリファイン鳥であるリートは、人2人を簡単に乗せられるほど大きく、その姿は荘厳(ソウゴン)で美しい。 そんな彼らは、その姿から『神の鳥』とまで言われている程だ。 明るい茶色の羽は、地上にいるときこそそのような色にしか見えないが、一度空を舞うと、日によって黄金の輝きを放つ。
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