シズク

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パレットに落とした、絵の具。 パレットは、それを弾くように。 水を含んだ筆からは、 滴るように、雫。 広げたキャンバスに、 広がる、僕の好きな色。 青くなる、純白の板。 広がる、空模様。 アイデンティティーの欠片、 そこにある存在、昔の僕の夢。 小さな蟻、大きな象、 それより大きい、地球。 イミテーション、 ひとつひとつ数えている、 宝石店のオーナー。 こんなちっぽけで、 薄っぺらいからこそ、 大切なもの。 思った色が出なくて、黒色を混ぜ込んだ。 曇り空、かかってく闇、 歪な、空模様だ。 ファジーな記憶を、めくってく僕が、 昨日見ていたもの。 扉、階段、鏡、テーブル、 バス、窓、信号機、車。 イノセント、どうにも変わらないけど、 変わってかないけど。 そこに残ってるのは、ただ、君と手を繋ぐ。 その意味だけなんだ。 絵の具を全部絞り出して、 醜い色を作り出した。 空っぽのチューブ、重たいパレット、 キャンバスに、叩きつけた。 アイデンティティーの欠片、 そこにある存在、昔の僕の夢。 小さな蟻、大きな象、 それより大きい、地球。 イミテーション、 ひとつひとつ数えている、 宝石店のオーナー。 こんなちっぽけで、 薄っぺらいからこそ、 大切なもの。 愛していたよ、君を。 なのにどうして? ポタリ、落ちたシズク。
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