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二人の男が立っていた。一人は若く、一人は老齢であった。
そして、その二人をジッと見守るように、黒服の妙齢の女性が椅子に座っている。
「お前は何を考えている? ふざけているのかっ!!」
睨み合っていた若い男と老齢の男であったが、その内、若い男が不意に口を開いた。
黒服を来た老女は、黙ったまま興味津々な眼差しで若い男を見つめる。
「ふぉっふぉっ、なんとな? ふざけるとはどういう意味じゃ?」
若い男と対峙していた老人は、深い皺を作って笑っていたが、目は笑っておらず、真剣に若い男を見据えている。数多の修羅場を潜り抜けてきた老人は、その狡猾な顔を隠さない。
「わかっているだろう! あの土地についてだっ!!」
若い男は、最早悲鳴に近い声を上げて叫んだ。
「おお。アレのことか。忘れておったわ。ふむ、アレは……ワシの土地じゃがなにか?」
「くっ、あれは俺の土地だっ! お前のもんじゃねえっ」
そう叫んだ若い男の両手からは、蒼白い光が漏れ光る。
若い男はつい先日、ある者から土地を買った。それは若い男にとって、今後、喫茶店を経営するために必要な土地であった。喫茶店経営という自分の夢に一歩近づいたのだ。
他人からしてみれば、ちっぽけな夢なのかも知れない。しかし、若い男にとっては一生を賭けた夢であった。
だが、その夢は大きく後退することになる。
その土地は別の者が、若い男が買った後すぐに再び買ってしまったのである。
つまり、売り主が二重に売ってしまったのだ。
若い男の後に、土地を購入した別の者──。それが現在若い男の目の前にいる、この老人である。
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