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「なんじゃ。あまりこちらの方の手を煩わせるでない」
老人は、やれやれと言った表情である。
若い男はふらふらと立ち上がる。全身ぼろぼろであるが、目は怒りに燃えている。
「やっと……、やっと解った……。お前、あの土地を不当に安い値で買っていたな……。しかも、売主とグルになって……」
若い男の体は、蒼く、蒼く光を帯びる。
「そ、そんなことはしておらんっ! 立証などできるものかっ」
「立証、か。立証してやるさ! 喰らえーー! 『背信的悪意の再抗弁』っ!!」
若い男の放つエネルギー弾は、キラキラ蒼く光りながら一直線に飛んでいく。それは綺麗な光であった。
「ぬおおおっ!」
老人はごろごろと転がりながら後ろに飛ばされる。
「まだまだだっ! これで、これで最後だ……。うおー! 『通謀虚偽表示の再抗弁』!!!!」
若い男は続けざまにエネルギー弾を放つ。
「ちょっ、ちょっ、ぐおうっ!」
老人は慌てていたが、凄まじい爆発音と共に更に飛ばされると、最早、体を動かすことすらできない状態になった。
「まさか、そうくるとは……。ぐふっ」
老人はぴくりとも動かなくなった。
すると、先程から立ち上がり、二人の行く末を見守っていた黒服の女性は、スッと右手を挙げた。
「原告の請求を認容する。この試合に要した費用は被告の負担とする」
その妙齢の女性は一言そう言うと、そそくさと会場を後にした。
「か、勝った──」
その後、若い男の喫茶店は無事建ち、繁盛するが、それはまた別の話である。
完
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