雨の降る夜には

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 お母さんを夢に見るときは決まって雨だ。何でかは、分かってる。お母さんが死んだのが、雨の日だったから。  その日お母さんは体調を崩して、ずっと横になってた。ごほごほと咳き込むくらい辛いはずなのに、私には笑顔を向けて、明日アップルパイを作ってあげるね、なんて言う。まだあの頃の私は幼くて、感情の裏にある感情を理解することは難しかった。けれど、なんとなく嫌な胸騒ぎが胸の奥でしていたような気がする。  雨は段々と強さを増していき、床で積み木を積み上げていた私は怖くなって、お母さんの部屋へ向かった。
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