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重たい体を起こし床に何気なく視線を下ろしてみると、
乱雑に広がっている制服とこんにちはしてしまった。
「ぁーあ…なんで畳んでないんだよ、昨日の俺…」
昨日帰ってから脱ぎ散らかしたままだった制服を、ブツブツ言いながらも拾い、すこし考えてから捨てる。
「…やめやめ、汚いし新しいの着よ」
制服が二枚あったことに感謝しつつ、俺は投げ捨てた制服を踏まないようにクローゼットの方へ進んだ。
「あたーらしーい、あーさがきたっきーぼーぅの…」
なんて歌いつつも、クローゼットを開けてコートに埋もれている制服を取り出す。
寝巻きをくしゃくしゃになっている制服の上に脱ぎ捨てて、ほのかに洗剤の匂いが残るカッターシャツに腕をとうした。
群青色のネクタイを緩く絞め、寝巻きとしわくちゃの制服を持ち一階へと降りる。
階段をのろのろと降りていると、何やらリビングから妹の上機嫌な声が聞こえた。
階段を下り終わり、やっぱり生暖かい温度の廊下に足をつけると、
“がっしゃーん”なんていう食器の悲鳴が右の耳から入って左から抜ける。
知らない、俺はたった今何も聞こえなくなった。
黒い煙がリビングから俺の立っている廊下まで漂ってきていたが、激しい頭痛により見えた幻覚ということにする。
軽く、いや激しい現実逃避しながら、俺はふらふらと洗面所に歩いていった。
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