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転生というものが存在するなら。叶うなら、またママとパパの下に生まれたい。
転生なんてない確率のが圧倒的に大きい。仮に願いが叶ったとしても、確実に覚えていないだろう。
それでも。ママのくれた言葉は、私に温かな充足感を与えてくれた。私は生まれてよかったんだ。
ごめんなさいママ。生まれたことを後悔しちゃって。
「……わっ」
体が光っている。それが何を意味するのかは、考えずとも直感的に解った。
私は成仏するんだ。
後悔がない、と言えば嘘だ。海のようにある。でも、それはどうしようもない。
「い……ずみ……?」
「……え?」
ママが目を見開いて私を見ている。見えてるの……? なんで……?
いや、そんなことはどうだっていい。時間はない。なんとなくわかる。
その間に出来ること……一言何か喋る程度。
決まっていた。
謝罪でも、お別れの言葉でもない。
ただほんの短い一言。
「ありがとう……」
もし、最後にたった一言伝えられるなら……感謝を伝えると。
私を生んでくれて有難う。
私を育ててくれて有難う。
そして。
私を愛してくれてありがとう。いつか、また。
そんな万感の想いを、ありがとうに籠めて。
完全に消えてしまう間際、霞みゆく視界の中、ママの顔が少し綻んでいたような気がした。
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