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「……美羽も……ね」
「え?」
奏大の言葉に美羽は振り返る。
「……NPCの美羽は……颯太に殺されたんだ」
「そう……だったんだ……」
十年という歳月が過ぎやっと口にする事が出来た言葉に、奏大は少し寂しげに微笑む。
「でも、それで良かったのかもしれない。心を持ったまま箱の中に閉じ込められ続けるのは……辛いだろうから」
奏大の言葉に美羽は頷いた。
この十年という歳月の中、二人は寄り添い互いに支えあい生きてきた。
そして美羽の中で、颯太への想いは何時しか昇華され、颯太の姿を重ねていた筈の奏大を愛おしく思うようになっていた。
それが良かったのか……美羽には分からない。
ただ、颯太との別れはあまりにも非現実的で……、社会的にも大きな傷を残した。
あれは颯太の想いだったのだろう。
失われた命に、美羽は手を合わせる。
――そして、自分を連れ去ろうとした颯太を想った。
何処までも激しく自分を愛した颯太を……。
そして奏大を見遣る。
夕日に照らされ赤く染まった奏大の姿。
すっかり青年となったその姿には、あの日の面影が残っていた。
――全ては初めて奏大に会った時から始まっていたんだ……。
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