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「何? このリボン。気持ち悪いんだよ!」
少年は言葉と共に、荒々しく少女の髪へと手を伸ばす。
頭を守るように手を伸ばした少女の目に、少年の手で揺れる真新しいピンクのリボンが映った。
慌ててリボンへと伸ばした少女の手は空を切り、ニタリと口元を歪め少年は教壇へと走っていく。
「いやっ! やめてよ!!」
静かな教室に倒れる椅子の激しい音を響かせ立ち上がった少女は、知らぬ間に三日月の形をした目、口――黒い人影に囲まれていた。
リボンを取り戻そうと少年の後を追おうにも、人影に行く手を遮られ辿り着くことが出来ない。
「お前にはこれが良く似合うよ! はやくその縮れた髪につけてみろよ」
少年の声に振り返れば、人影の間にピンクの物が揺れている。
慌ててそれを引っ掴み、息を飲んだ。
「あははは! 本当、こっちの方がお似合いだね」
「あんたにピンクが似合うはずがないでしょ?」
「その縮れた髪、鳥でも飼っているの?」
「きゃははは!」
――黒いマジックで乱暴に塗りたくられたリボン。
そして次々と投げかけられる言葉に、少女は口を開くことも出来ず立ち尽くした。
無言のままに滴り落ちる涙に、少女を囲む人影は更に歓喜の声をあげる。
「うわ、泣き顔も気持ち悪い!」
「ちょっと、涙ぐらい拭いたら?」
言葉とは裏腹に歪んだ笑みを湛え誰へとも無く合図を送れば、次々に浮かれた声が教室に響き渡る。
「あ、いいかも! 少しはかわいくなるかもよ?」
「俺が拭いてやるよ」
少年は椅子にかけられた雑巾を摘み上げた。
少女は顔を引き攣らせ、必死に人影を掻き分け始める。が、幾つもの手が少女の髪を腕を……捉えた。
「いや! やめてよ、いやー!!」
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