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あの時、地域一体全ての信号が青に変わっていた……。
トラックは二人をかすめ壁へと激突した。
――運転手は即死だった。
多数の犠牲者を出したあの事故は、原因不明のまま今に至っている。
「ゲームが出来なかったのに、どうしてメールが出来たんだろう……」
ふと呟く美羽に、奏大は遠い目をしながら答える。
「多分、ゲームサーバーはネットから遮断されていたけれど、メールサーバーは繋がっていたんだろうね」
「そっか……」
二人は肩を並べ、景色を眺めた。
かつてゲームの中で時を共にした岬に良く似た公園。
夕日がそこで寛ぐ人々に降り注いでいる。
その中で介護用ロボットが、車椅子や二足歩行の姿で動きまわっていた。
――研究所に残された研究員は事件を重く受け止め『失われた命を無駄には出来ない』と、AIの研究を進め介護用ロボットを完成させた。
生み出された介護用ロボットは車被介護者に自由を与え、あの痛ましくも切ない事件は時の流れとともに、人々の記憶の奥底へ追いやられていった。
二人は岬のベンチに座り沈み行く太陽の下、被介護者がロボットと嬉しそうに話している姿を静かに見つめる。
「この中に……颯太君も居るはずだったのにね……」
美羽の胸がチクリと痛む。
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