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「よし、今のうちに……」
「えっ?」
マリーが何かを呟き、ソロソロとその場を離れようとする。
「マリーさん、どこに行くんですか?」
不思議に思ったから声を掛けたが、マリーはビクッと体を動かす。
「しーっ! 今は話し掛けないで……」
「あっ、逃げちゃダメですよ! まだ酒場の依頼を終わらせてないんですから!」
纏わり付くイングリドとヘルミーナをリリーに預けると、駆け足でマリーを捕まえて言う。
酒場の依頼。
どうやらマリーはそれの事をすっかり忘れていたようだ。
「い、依頼? あれはエリーがやってくれたんじゃ……」
いや……どうやら忘れていた訳ではないが、勘違いを起こしているらしい。
「はい、確かに私が最後をやりますが、素材を集めてきてくれるはずのマリー先輩が何もしてなきゃ、進みませんよ! ほら、期限明日までなんですから、急ぎましょう!」
「ええ! 今からぁ!? ちょっと、みんな助けてぇえ!!」
だが、マリーの願いも虚しく、あっという間にエリーに連れられて行ってしまった。
……案内役が居なくなってしまった。
グランはため息をつくと、リリーが一歩、前に出る。
「まあ、あれなら仕方ないわね。今回はあたしが案内するわ」
リリーが微笑むと、グランは顔を上げた。
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