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「着いたわ。ここが、金の麦亭よ」
辺りは既に暗くなり始めている。
ザールブルグの中央に位置する広場の一角に、グランとキャリナは案内された。
向かいに教会のある形で、酒場にしては目立つ場所にある。
その入口の前で、三人は立ち止まった。
中からは、色々な人の声が聞こえてくる。
「私はいつも、この酒場で仕事をもらって生活しているのよ」
リリーは先行して、金の麦亭の扉を開いた。
二人は後に続いて入店する。
中はそこそこ広かった。
目の前には下に続く短い階段があり、すぐ左にはフルートなどの楽器を奏でる人達が集まって演奏をしている。
下に降りてみると、右にはカウンター、左から壁を伝って奥まで大きなテーブルが三、四つ設置されていた。
第一印象は、そこまで嫌な空気ではないとグランは感じ取った。
「ハインツさーん!」
リリーは突然、カウンターでワイングラスを拭いていた人物に声を掛ける。
どうやらこの店のマスターのようだ。
「おう、姉さんか。今日は随分遅いじゃないか」
「うん、ちょっと色々あってね……あ、そうだ、この前請けた依頼の品を持って来たわ」
リリーがそういうと、アトリエを出てくる時に持って来た袋の中から、液体の入った瓶を取り出す。
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