プロローグ

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背筋が凍りつく。 逃げ場のない車内で、いきなり拳銃を突き付けられたのだ。 思考がまだ追い付かない。 ……このままだと殺される。 男からは静かな殺気が漂っていた。 乳房の下に押し付けられた鉄の固まりが、無機質な痛みを与える。 備えが出来ていなかった私に、反撃できる要素は皆無だった。 ……心当たりはある。 平松組を壊滅させたとはいえ、全員が足を洗ったわけではない。 むしろ、足を洗った人間の方が少ないはずだ。 どうしたらいい? とりあえず、シフトノブをローに入れて車をスタートさせた。 フェアレディΖは後輪を滑らせて、駐車場から道路に躍り出る。 とんだ休日を予測させる出来事だった。
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