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薄暗い夜景を、唯何と無く部屋の窓から見つめた。ざわつく木々と、不気味なくらい光輝く月に恐怖を抱き、膝を抱える。空は凛として高く、異常な熱帯夜が本国を襲った。
――ピロロロロ……――
機械的な電子音が、部屋に鳴り響き、視線を移す。
――ピロロロロ……――
依然としてその音が空間を支配し、オレは携帯電話を掴み、ディスプレイを覗く。着信は電話で、通話ボタンを押し、応対した。
「もしもしぃ?猫【マオ】?」
知らない声が、オレの胸元にぶら下がる名札に記入されたものと、全く同じ名を口に出す。
「誰?」
唯一言そう言えば、電話口の相手は短く舌打ちし、態度を変えた。
「またかよ!くそ猫が。毎回毎回毎回毎回開口一言目が『誰?』とか無くね?いっぺん死ね!!!!」
相手の話によれば、オレが相手を知らないのは毎度お馴染で、相手はオレの死を望んでいるらしい。
「死ねば良いっスか?」
オレが声色変えずに言うと、相手は呆れた声を出した。
「ばっかじゃねぇの?死ねっつったら死ぬんか、猫はよ?!」
そう言われても、オレには記憶らしい記憶と言うものが見当たらず、“猫”と言うものが見当たら無かった。
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