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都心近くとだけあって、駅付近は大分賑わっていた。
其れでも、彼……有人を見付けるのは容易い事で、俺は噴水まで走る。
「悪い、待たせた」
俺がそう言えば、有人は静かに笑う。
「気にするな、端から期待等していない」
にこりと笑って言う事か、と突っ込めば更に笑われた。
「で、何の用だ?」
隣に腰掛け、帽子をずらす。
「此処じゃなんだから、店に行こう」
有人の表情はこわばり、何時にも増して真剣だった。
「分かった」
俺はそんな有人を察し、唯有人の後をついて行く。
暫く歩けば、其処は繁華街の暗い部分へと繋がる道で、有人は長い銀髪を風になびかせ、優雅に歩いて行った。
「どうした、早く入りなよ。気兼ねする事は無い。此処は俺の店なんだから」
有人の笑顔に、つられるように店内へと足を踏みいれる。此処へ来るのは三度目だと言うのに、どうも慣れない。
「小人【シャオレン】、奥の部屋を用意なさい」
有人が小さな少年に指示を出し、厨房の方へ姿を消す。
「大人【ダアレン】、店一番の料理と酒を。出来たら小人に運ばせなさい」
そう言い、俺の方へ戻って来た。
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