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「もう!なんで逃げるのよ」 水野さんは、息を弾ませながら俺に非難するように言った。 「……仕方ないだろ、あんなに視線が俺にきてたら」 俺は、水野さんに挨拶されたあと、すぐに教室から駆け出ることになった。 なぜなら、あの一瞬、俺への視線はインフレを起こし、俺の羞恥心が限界を越えたからだ。 自分に自信がなくなって以来、初めてあんなに視線を浴びたのだから仕方のないことだ。 しかし、最悪だ……。 格好悪いことこの上ない。 女の子に挨拶され、教室を駆け出る少年……どこの純情ボーイだよ……。 今時、そんなヘタレなシーン、ドラマや漫画でさえない。 もう、放っておいてくれと言わんばかりに、屋上前のスペースに体育座りでうずくまっていると、先ほどのように水野さんが話しかけてきたのだ。 「仕方ないって!あんた馬鹿?あそこは、私にちゃんと挨拶しかえしなさいよ!」 馬鹿って……。 ちょっと俺はムッとしてしまった。 確かに、俺が逃げ出したのは悪いけど、そんな、あんた馬鹿?なんて若干何かを彷彿とさせるような悪口を言われるなんて心外だ。 まぁ結局……。 「ごめんなさい」 謝るしか、俺には選択肢はないんだけどね。 「はぁ……まぁ、しょうがないわね」 水野さんは、深く溜め息を吐き、わざとらしく肩を竦めた。 「とにかく、次からは私が話しかけても逃げないこと!」 「はい……了解です」 俺は、身を縮めながら、頷いた。 その後、水野さんから、今日の目標を言われた。 「今日の目標は、みんなに顔と名前を一致させてもらえるようにすること!」 「無理ですよっ!」 思わず俺は、叫んでしまった。 俺みたいな地味なやつが1日ぽっちで名前を覚えてもらえるとは思えない。 「なーに言ってるのよ、私がいるんだから大丈夫よ」 そう言って、水野さんは、ニヤリと笑った。 俺は、その笑みをみて、ただひたすら冷や汗を流した。
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